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豊橋の牛川育英幼稚園で青空卒園式

カテゴリー:特集

空の下、卒業証書を受け取る牛川育英幼稚園の園児=豊橋市牛川町で
空の下、卒業証書を受け取る牛川育英幼稚園の園児=豊橋市牛川町で

 桜の花びらが舞い散る季節。会社、大学、学校、幼稚園。大人も子どもも、多くの別れがあり、出会いがある。新型コロナウイルス禍でありとあらゆる式典が中止となる中、多くの組織や団体が、なんとかこの尊い一瞬を平常時に近いものにできないか、暗中模索を続けている。ひとつの答えを出した卒園式を取材した。
 今月17日、豊橋市北部の牛川育英幼稚園。卒園式が園のグラウンドで営まれた。コロナ禍での卒園式はこれで3回目。過去2回はコロナ前と同じように室内での開催だった。「密」を避けるために、出席できるのは園児1人につき保護者一人だった。
 子どもたちの大切な門出をこのような形でしかできないのか。園側も葛藤があったという。赤澤きよの保育教諭は「人生の大切な大切な行事。なんとかお父さんとお母さんが出席できるような形にできないか。悩み続けていました」と話す。そうした中、主に母親で構成される母の会から「卒園式、グラウンドでやりませんか? それなら『密』を避けられるから両親とも参加できる」という提案が届いた。
 園側と保護者側の思いが一致した。青空の下、園児とその保護者が一堂にグランドに集まる卒園式が実現した。ここまでくる道のりは平坦ではなかったという。赤澤保育教諭は「そんなに集まるのは怖いという意見もいただいた。ただ、意見は違っても、子どもたちのためになることなら何でもするという根底の思いは同じ。すべての保護者の皆さまの理解を得られ、とてもうれしかった」と話す。
 母の会の大橋華奈会長は「青空の下、最後は、マスクを外して、卒園式ができてうれしい。映像や写真ではなく直接。こんな時だからこそ、みんなで力を合わせてできた卒園式。一生の思い出になりました」
 コロナ禍に対する考え方は多種多様だ。もっと規制を緩和すべきだと考える人がいる一方、規制を維持すべきだ、強化すべきだという人もいる。どちらが正しい、どちらが間違っているという話ではない。この幼稚園を見てもわかるようにありとあらゆる価値観の人が集まるのが社会だ。
 アルコール消毒、保護者はマスク着用。保護者は2人が参加でき、子どもたちはマスクをせず、卒園証書を受け取ることができた。歌も歌えた。誰もが納得する結論を導き出した。
 両極端の主張からすれば、納得のいかない結論かもしれない。しかし、すべての関係者が納得するところで妥協し、みんなの幸せを最大化することを目指した牛川育英幼稚園の卒園式。この意思決定やいきさつのなかに、大切な民主主義のプロセスが見えるし、誇るべき結論に思えてならない。
(本紙客員編集委員・関健一郎)

 桜の花びらが舞い散る季節。会社、大学、学校、幼稚園。大人も子どもも、多くの別れがあり、出会いがある。新型コロナウイルス禍でありとあらゆる式典が中止となる中、多くの組織や団体が、なんとかこの尊い一瞬を平常時に近いものにできないか、暗中模索を続けている。ひとつの答えを出した卒園式を取材した。
 今月17日、豊橋市北部の牛川育英幼稚園。卒園式が園のグラウンドで営まれた。コロナ禍での卒園式はこれで3回目。過去2回はコロナ前と同じように室内での開催だった。「密」を避けるために、出席できるのは園児1人につき保護者一人だった。
 子どもたちの大切な門出をこのような形でしかできないのか。園側も葛藤があったという。赤澤きよの保育教諭は「人生の大切な大切な行事。なんとかお父さんとお母さんが出席できるような形にできないか。悩み続けていました」と話す。そうした中、主に母親で構成される母の会から「卒園式、グラウンドでやりませんか? それなら『密』を避けられるから両親とも参加できる」という提案が届いた。
 園側と保護者側の思いが一致した。青空の下、園児とその保護者が一堂にグランドに集まる卒園式が実現した。ここまでくる道のりは平坦ではなかったという。赤澤保育教諭は「そんなに集まるのは怖いという意見もいただいた。ただ、意見は違っても、子どもたちのためになることなら何でもするという根底の思いは同じ。すべての保護者の皆さまの理解を得られ、とてもうれしかった」と話す。
 母の会の大橋華奈会長は「青空の下、最後は、マスクを外して、卒園式ができてうれしい。映像や写真ではなく直接。こんな時だからこそ、みんなで力を合わせてできた卒園式。一生の思い出になりました」
 コロナ禍に対する考え方は多種多様だ。もっと規制を緩和すべきだと考える人がいる一方、規制を維持すべきだ、強化すべきだという人もいる。どちらが正しい、どちらが間違っているという話ではない。この幼稚園を見てもわかるようにありとあらゆる価値観の人が集まるのが社会だ。
 アルコール消毒、保護者はマスク着用。保護者は2人が参加でき、子どもたちはマスクをせず、卒園証書を受け取ることができた。歌も歌えた。誰もが納得する結論を導き出した。
 両極端の主張からすれば、納得のいかない結論かもしれない。しかし、すべての関係者が納得するところで妥協し、みんなの幸せを最大化することを目指した牛川育英幼稚園の卒園式。この意思決定やいきさつのなかに、大切な民主主義のプロセスが見えるし、誇るべき結論に思えてならない。
(本紙客員編集委員・関健一郎)

空の下、卒業証書を受け取る牛川育英幼稚園の園児=豊橋市牛川町で
空の下、卒業証書を受け取る牛川育英幼稚園の園児=豊橋市牛川町で

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