丸山薫賞に阿部さん詩集「からすのえんどう」

　すぐれた現代詩集をたたえる全国公募コンテスト「第29回丸山薫賞」（豊橋市など主催）に、阿部はるみさん（83）＝横須賀市＝の詩集「からすのえんどう」（書肆山田刊）が選ばれた。散文では描けない独特な世界観や格調高い文体などが評価された。贈呈式を10月21日、「ホテルアソシア豊橋」で開く。
　今年３月末までの１年間に刊行された現代詩集２２７冊のうち、事前に選んだ候補６作品を審査した。今月２日の選考委員会で３作品に絞って討議したが結論が出ず、出席者の投票で阿部さんの作品に決まった。
　受賞作は昨年10月に刊行した５冊目の詩集。選考委の高階杞一さんは「日常の風景を描きながら、時間や空間を自在に飛ぶところに魅力を感じる。散文で描けない世界観をつくり、名器といわれる工芸品ような格調高さがうかがえる」などと評した。
　阿部さんは産能短期大学卒業、新聞社勤務を経て主婦。１９８１年から北村太郎氏に師事し、現在は同人誌「アル」で創作活動に励む。
　受賞について「丸山薫といえば『帆・ランプ・鴎（かもめ）』の中の『秋の印象』が浮かぶ。そのような誰かの心に深く届く詩を目指したい。40年来の創作活動で『カンペキ』と思えるものはない。限界を決めず、自分の作品を厳しく見つめていきたい」と述べた。
　同賞は豊橋ゆかりの詩人丸山薫の没後20年を記念して創設した。正賞は記念盾と副賞１００万円が贈られる。
【加藤広宣】