豊橋の吉田文楽保存会 後継者候補に小中学生

　豊橋市の無形民俗文化財「飽海（あくみ）人形浄瑠璃」の保存継承に取り組む吉田文楽保存会は６日午後１時半から、向山大池町の市民文化会館で定期公演を開く。本番間近を迎え、メンバーらも毎週末の稽古に熱が入る。今年は地元小中学生らの関心も高まり、未来の後継者候補が育ちつつあるという。公演を機にさらに関心を広めたい考えだ。

　地域に約４００年続く人形浄瑠璃を後世に継ごうと、地元の愛好者らが１９８８年に保存会を立ち上げた。市のふるさと講座で後継者育成に取り組み、90年には市文化財に指定された。
　現在は人形を操る「人形師」が13人、大夫や三味線を手掛ける「浄瑠璃」が10人いる。高齢化で大夫と三味線の担い手は育成中だ。定期公演では関西などから特別出演してもらうが、毎月第２、４土曜の稽古はビデオやＣＤの音源が頼りだ。
　10月に入ると豊城地区市民館での稽古は毎週土曜となり、メンバーたちも目の色が変わる。ビデオ映像と音声に合わせて３人１組の人形師たちが息を合わせる。鈴木省二会長が動きに目を光らせて指示を飛ばす。
　保存会では今年度、地元の市立八町小学校での出前授業を始めた。９月には同じ地元の豊城中学校人形浄瑠璃部員が後輩たちの前で演じた。児童らの心をつかみ、10月には人形操作の体験授業を開くまでに発展。感想文でも「中学へ進んだら人形浄瑠璃部に入りたい」などと強い関心を示す児童が多かった。
　豊城中の部員は現在14人。活動実績や物珍しさにひかれ、１年生は10人と急増した。工藤晏慈さんは「部活動を見学して楽しそうだと心をひかれた。人形操作は見た目より難しいが、楽しさが勝っている。保存会の定期公演も見てみたい」と興味をのぞかせる。
　副会長の伊賀太吉さんは「過去の活動ではないぐらい子どもたちの反響が大きい。中学生の部活動も奏功している。まずは公演を見て興味を持ち続けてほしい。演じるのはその後でも遅くはない」と後継者の卵に期待を寄せた。

　定期公演は無料。「二人三番叟」「傾城阿波の鳴門　巡礼歌の段」「艶姿女舞衣　酒屋の段」を演じる。大夫は竹本友代、友幸の両氏、三味線は鶴澤友吉氏。問い合わせは伊賀さん（０９０・５６２４・９１２５）へ。　
【加藤広宣】