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東三河豪雨から1カ月、農業被害が深刻

浸水後、時間とともに腐敗が進んだカボチャ
浸水後、時間とともに腐敗が進んだカボチャ

 台風2号に伴う東三河豪雨(6月2日)からあすで1カ月。「100年に一度」の雨で、豊川(とよがわ)流域を中心に住家や農業施設などへの浸水被害が相次いだ。山間部では土砂崩れに遭った孤立集落も残る。被害の全貌が徐々に明らかになる一方、被災者の復興は道半ばだ。【取材班】

■豊川市
 農業被害が深刻だ。施設園芸は温室内の浸水で作物が泥をかぶるなど出荷できなくなった。露地野菜も水没による根腐れなどの病害に見舞われ、収穫量の激減が見込まれる。
 大葉やハーブなどを集出荷する「東三温室園芸農協」(下長山町)の職員によると、59農家のうち41農家が浸水被害を受けた。被害額は作物が約6億3000万円、ヒートポンプなど設備は約3億円。被害面積は8万7000平方㍍に上る。
 施設園芸では近年、IT(情報技術)を生かした「スマート農業」が進んだ。室内の温度管理や換気、採光などをコンピューター制御する施設も増えた。水没で電子機器が故障し、設備投資が必要な農家もいる。
 同農協の古川信行事務局長は「中には保険に未加入の農家もいる。返済不要な補助金などの支援が不可欠。産地の役割を果たせなくなる」と公的支援を切望する。
 露地野菜は作物への被害が後で分かることもある。水が引いた直後は「大丈夫」と思った作物も、腐敗やカビが目立つようになった。
 一宮町の酒井美代子さん(54)によると、カボチャは外観に問題はなかったが徐々に腐敗が進んだという。ピーマンなど根が弱い野菜も水が引いた後に枯れていった。
 周辺農地は水路と呼べるものがなく、農地周辺にある側溝の排水能力では心もとない。
 酒井さんは「行政に対策として、排水能力を高めるポンプや水路の設置を求めてきた。住宅地優先のため実現の可能性は低い」と訴える。

■豊橋市
 豊橋市内の豊川流域には、伝統的な治水工法「霞堤(かすみてい)」が残る。堤防の開口部から一時的に水を逃がして川の増水を防ぐ。豊川放水路が完成する1965年頃まで9カ所あった堤は現在、上流から金沢(豊川市)、賀茂、下条、牛川(豊橋市)の4カ所のみとなった。堤内の霞提地区は田畑が広がる。
 豊橋市内の3地区には農家や街道沿いの商店を含め約2000世帯、5000人余が住む。上流から3番目の下条地区でも豪雨で住家や農地が被害に遭った。
 瑞龍寺(下条西町)の林博道住職(77)によると、堤防の開口部に近い「五井地区」は60世帯が暮らす。田畑や園芸施設が集まる堤防付近で浸水が著しく、多くの車が水没したり流されたりした。
 国土交通省では牛川を除く3堤に「小堤」を設ける治水対策を打ち出していた。治水の起点となる設楽ダムの工期延伸に伴い完成は2034年に持ち越された。
 林さんは「浸水対策を知らない若い世帯も増えた。住宅建築ではかさ上げは常識となったが、今回は未対策の駐車場が浸水被害に遭った。霞提対策は早期に実現してほしい」と訴える。
 市が29日発表した被害状況によると、床上浸水は72件、床下浸水は79件。車両浸水などは95件に上った。農業被害額も9億円、被害面積は140万平方㍍という。

 台風2号に伴う東三河豪雨(6月2日)からあすで1カ月。「100年に一度」の雨で、豊川(とよがわ)流域を中心に住家や農業施設などへの浸水被害が相次いだ。山間部では土砂崩れに遭った孤立集落も残る。被害の全貌が徐々に明らかになる一方、被災者の復興は道半ばだ。【取材班】

■豊川市
 農業被害が深刻だ。施設園芸は温室内の浸水で作物が泥をかぶるなど出荷できなくなった。露地野菜も水没による根腐れなどの病害に見舞われ、収穫量の激減が見込まれる。
 大葉やハーブなどを集出荷する「東三温室園芸農協」(下長山町)の職員によると、59農家のうち41農家が浸水被害を受けた。被害額は作物が約6億3000万円、ヒートポンプなど設備は約3億円。被害面積は8万7000平方㍍に上る。
 施設園芸では近年、IT(情報技術)を生かした「スマート農業」が進んだ。室内の温度管理や換気、採光などをコンピューター制御する施設も増えた。水没で電子機器が故障し、設備投資が必要な農家もいる。
 同農協の古川信行事務局長は「中には保険に未加入の農家もいる。返済不要な補助金などの支援が不可欠。産地の役割を果たせなくなる」と公的支援を切望する。
 露地野菜は作物への被害が後で分かることもある。水が引いた直後は「大丈夫」と思った作物も、腐敗やカビが目立つようになった。
 一宮町の酒井美代子さん(54)によると、カボチャは外観に問題はなかったが徐々に腐敗が進んだという。ピーマンなど根が弱い野菜も水が引いた後に枯れていった。
 周辺農地は水路と呼べるものがなく、農地周辺にある側溝の排水能力では心もとない。
 酒井さんは「行政に対策として、排水能力を高めるポンプや水路の設置を求めてきた。住宅地優先のため実現の可能性は低い」と訴える。

■豊橋市
 豊橋市内の豊川流域には、伝統的な治水工法「霞堤(かすみてい)」が残る。堤防の開口部から一時的に水を逃がして川の増水を防ぐ。豊川放水路が完成する1965年頃まで9カ所あった堤は現在、上流から金沢(豊川市)、賀茂、下条、牛川(豊橋市)の4カ所のみとなった。堤内の霞提地区は田畑が広がる。
 豊橋市内の3地区には農家や街道沿いの商店を含め約2000世帯、5000人余が住む。上流から3番目の下条地区でも豪雨で住家や農地が被害に遭った。
 瑞龍寺(下条西町)の林博道住職(77)によると、堤防の開口部に近い「五井地区」は60世帯が暮らす。田畑や園芸施設が集まる堤防付近で浸水が著しく、多くの車が水没したり流されたりした。
 国土交通省では牛川を除く3堤に「小堤」を設ける治水対策を打ち出していた。治水の起点となる設楽ダムの工期延伸に伴い完成は2034年に持ち越された。
 林さんは「浸水対策を知らない若い世帯も増えた。住宅建築ではかさ上げは常識となったが、今回は未対策の駐車場が浸水被害に遭った。霞提対策は早期に実現してほしい」と訴える。
 市が29日発表した被害状況によると、床上浸水は72件、床下浸水は79件。車両浸水などは95件に上った。農業被害額も9億円、被害面積は140万平方㍍という。

浸水後、時間とともに腐敗が進んだカボチャ
浸水後、時間とともに腐敗が進んだカボチャ

カテゴリー:社会・経済

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