日本一のウズラ卵が危機 豊橋の農家が激減
豊橋市が生産量日本一を誇るウズラ卵が危機にひんしている。昭和50年代60戸以上あった農家も、今年2月には7戸にまで激減。ウズラ卵の相場は過去最高水準に達するが、それ以上に飼料価格や物流費などの原材料費が高騰、採算悪化に苦しむ農家が続々と廃業している。後継者不足に加え、新規参入への高い壁もあり、農家減少に歯止めがかからないでいる。
1965(昭和40)年、日本で唯一のウズラ専門農協「豊橋養鶉農業協同組合」が設立され、ウズラ卵の一大産地として全国に知られるようになった豊橋市。以降、飼育農家は75年の61戸(飼育羽数350万羽)、飼育羽数は89・90年の439万羽をピークに減少傾向で、今年2月には7戸160万羽にまで激減した。
廃業の背景にある飼料価格の高騰は、小さな体で大きな卵を産むウズラに打撃を与えた。ウズラは腸が短いため、必要な栄養素を吸収できるようにニワトリに比べ、高カロリー高タンパクの高価な餌を与える。だが近年、餌となるトウモロコシなど穀物が代替エネルギーとしてバイオエタノールの需要が拡大したために価格が上昇。市内の農家によると、「2005年から1・5倍くらいは上がっている」という。さらに、冬場に使う暖房用の原油価格や人件費、物流費の上昇も農家を苦しめる。
今年9月、相場の高値が続くことを受け、「キューピー」がウズラ卵商品の価格引き上げを発表し、話題となった。
確かに、豊橋市場の相場は30個あたり219円(12月1日現在)と10年前に比べ2割ほど高い。それでも、原材料費の高騰を補うことはできず、採算悪化は深刻だ。
「父の代からやってきて、できれば卵をやめたくなかったが、続けてもマイナスなことしかなかった」と話すのは、豊橋市高塚町のうずらの里・内田ファームの内田貴士社長(42)。昨年10月、30年ほど続けた採卵農場を閉め、肉生産に特化した。
内田社長は、農家廃業で供給量が減っているにもかかわらず、価格調整がうまく機能していない背景に「例えば、大きな加工会社に対し、個人農家では価格交渉力がない。国内で供給量が不足しても安価な輸入卵がすぐに調達でき、その卵との差別化も難しい。鶏卵は食生活に不可欠だが、ウズラ卵は嗜好(しこう)品。値段が高いとスーパーで売れないという考えもある」と説明する。
他の農畜産業と同じく後継者不足は深刻だが、新規就農者獲得も出遅れている。豊橋養鶉農協でも、小学校の出前授業や見学の受け入れをしたいが「現状、農協も生産者も忙しくとても無理」と話す。
さらに、新規参入しようにも、市場自体が比較的小さいため、設備はニワトリ用を改造したり、特注で頼んだりすることになるため、初期投資もかかる。
さまざまな課題を抱える中、若手の農家らは新規市場の開拓や増羽に乗り出し、産業の活性化に取り組む。
ウズラ卵生産量全国1位を誇る豊橋市大国町のマルタカ商事2代目の常務取締役髙林勝弘さん(39)は、医療機器メーカーの営業経験を生かし、ウズラ卵を使っていない飲食店などに使い方を提案し、売り込みを加速させる。人材不足を見据え、国の補助金を活用し、一部を全自動で卵が回収できるようにした。
髙林さんは「楽しさもあるが、利益につながっていないので厳しい。まだ完全に自動化していない農家もある。一つずつ改善しながら、業界全体で利益を生み出したい」と前を見据える。
(飯塚雪)
豊橋市が生産量日本一を誇るウズラ卵が危機にひんしている。昭和50年代60戸以上あった農家も、今年2月には7戸にまで激減。ウズラ卵の相場は過去最高水準に達するが、それ以上に飼料価格や物流費などの原材料費が高騰、採算悪化に苦しむ農家が続々と廃業している。後継者不足に加え、新規参入への高い壁もあり、農家減少に歯止めがかからないでいる。
1965(昭和40)年、日本で唯一のウズラ専門農協「豊橋養鶉農業協同組合」が設立され、ウズラ卵の一大産地として全国に知られるようになった豊橋市。以降、飼育農家は75年の61戸(飼育羽数350万羽)、飼育羽数は89・90年の439万羽をピークに減少傾向で、今年2月には7戸160万羽にまで激減した。
廃業の背景にある飼料価格の高騰は、小さな体で大きな卵を産むウズラに打撃を与えた。ウズラは腸が短いため、必要な栄養素を吸収できるようにニワトリに比べ、高カロリー高タンパクの高価な餌を与える。だが近年、餌となるトウモロコシなど穀物が代替エネルギーとしてバイオエタノールの需要が拡大したために価格が上昇。市内の農家によると、「2005年から1・5倍くらいは上がっている」という。さらに、冬場に使う暖房用の原油価格や人件費、物流費の上昇も農家を苦しめる。
今年9月、相場の高値が続くことを受け、「キューピー」がウズラ卵商品の価格引き上げを発表し、話題となった。
確かに、豊橋市場の相場は30個あたり219円(12月1日現在)と10年前に比べ2割ほど高い。それでも、原材料費の高騰を補うことはできず、採算悪化は深刻だ。
「父の代からやってきて、できれば卵をやめたくなかったが、続けてもマイナスなことしかなかった」と話すのは、豊橋市高塚町のうずらの里・内田ファームの内田貴士社長(42)。昨年10月、30年ほど続けた採卵農場を閉め、肉生産に特化した。
内田社長は、農家廃業で供給量が減っているにもかかわらず、価格調整がうまく機能していない背景に「例えば、大きな加工会社に対し、個人農家では価格交渉力がない。国内で供給量が不足しても安価な輸入卵がすぐに調達でき、その卵との差別化も難しい。鶏卵は食生活に不可欠だが、ウズラ卵は嗜好(しこう)品。値段が高いとスーパーで売れないという考えもある」と説明する。
他の農畜産業と同じく後継者不足は深刻だが、新規就農者獲得も出遅れている。豊橋養鶉農協でも、小学校の出前授業や見学の受け入れをしたいが「現状、農協も生産者も忙しくとても無理」と話す。
さらに、新規参入しようにも、市場自体が比較的小さいため、設備はニワトリ用を改造したり、特注で頼んだりすることになるため、初期投資もかかる。
さまざまな課題を抱える中、若手の農家らは新規市場の開拓や増羽に乗り出し、産業の活性化に取り組む。
ウズラ卵生産量全国1位を誇る豊橋市大国町のマルタカ商事2代目の常務取締役髙林勝弘さん(39)は、医療機器メーカーの営業経験を生かし、ウズラ卵を使っていない飲食店などに使い方を提案し、売り込みを加速させる。人材不足を見据え、国の補助金を活用し、一部を全自動で卵が回収できるようにした。
髙林さんは「楽しさもあるが、利益につながっていないので厳しい。まだ完全に自動化していない農家もある。一つずつ改善しながら、業界全体で利益を生み出したい」と前を見据える。
(飯塚雪)