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豊川幼児殺害事件 心理学者の鑑定書提出

心理学者の鑑定書を説明する後藤弁護士㊨と川岸弁護士=名古屋高裁で
心理学者の鑑定書を説明する後藤弁護士㊨と川岸弁護士=名古屋高裁で

 16年前の豊川幼児殺害事件で、田邉雅樹受刑者の弁護団が27日、逆転有罪判決を下した名古屋高裁に田邉氏の無実を示す新たな証拠資料を提出した。心理学者が自白内容を分析した鑑定書で、再審で無実が証明された足利事件と酷似した「新たな虚偽自白過程モデル」で田邉氏と事件は無関係と強調している。

 事実と異なる矛盾が複数ある田邉氏の自白を分析したのは、多くの再審事件で供述を分析してきた奈良女子大学名誉教授・立命館大学客員教授の浜田寿美男氏。豊川事件の分析結果を「自白の任意性と信用性には合理的な疑問があり、無実の徴表が見出される」とした。
 取り調べ2日という早い段階で自白した田邉氏を、DNA再鑑定で無実が証明された足利事件の菅谷利和氏の自白過程に似ているとし「取調官が被疑者を犯人と思い込み、無実の可能性を考えず、熱心に執拗に取り調べ、それが延々と続き、そこに『有罪方向へ向かう強力な磁場』ができあがる」と説明。この場合、従来の虚偽自白モデルにみられる取調官による罵声や机を叩くといった暴力行為がなくても、任意性判断によるチェック機能が果たされないと主張した。
 また、本来は取り調べの念頭に置くべき「無実の可能性」が、日本には根付いていないと指摘。田邉氏を特異な成育歴から対人緊張に極度に弱くなった「供述弱者」と表現し、田邉氏が犯行時間帯のアリバイに安易な虚偽答弁をし、4度も繰り返したことについても「確定判決が言う有罪意識を裏付けるものではなく、むしろかえって無実意識を裏付けると言うべき」と強調。この他、自白内容の展開や、撤回の過程の分析からも、田邉氏の無実を指摘している。
 主任弁護士の後藤昌弘氏は「私たちも読んで目からうろこが出た。なぜ供述内容に矛盾が出たのか、その過程が無実の証明につながる。裁判官はこれを一つの視点として受け止め、供述記録を読み直してほしい」と訴えた。
(由本裕貴)

 16年前の豊川幼児殺害事件で、田邉雅樹受刑者の弁護団が27日、逆転有罪判決を下した名古屋高裁に田邉氏の無実を示す新たな証拠資料を提出した。心理学者が自白内容を分析した鑑定書で、再審で無実が証明された足利事件と酷似した「新たな虚偽自白過程モデル」で田邉氏と事件は無関係と強調している。

 事実と異なる矛盾が複数ある田邉氏の自白を分析したのは、多くの再審事件で供述を分析してきた奈良女子大学名誉教授・立命館大学客員教授の浜田寿美男氏。豊川事件の分析結果を「自白の任意性と信用性には合理的な疑問があり、無実の徴表が見出される」とした。
 取り調べ2日という早い段階で自白した田邉氏を、DNA再鑑定で無実が証明された足利事件の菅谷利和氏の自白過程に似ているとし「取調官が被疑者を犯人と思い込み、無実の可能性を考えず、熱心に執拗に取り調べ、それが延々と続き、そこに『有罪方向へ向かう強力な磁場』ができあがる」と説明。この場合、従来の虚偽自白モデルにみられる取調官による罵声や机を叩くといった暴力行為がなくても、任意性判断によるチェック機能が果たされないと主張した。
 また、本来は取り調べの念頭に置くべき「無実の可能性」が、日本には根付いていないと指摘。田邉氏を特異な成育歴から対人緊張に極度に弱くなった「供述弱者」と表現し、田邉氏が犯行時間帯のアリバイに安易な虚偽答弁をし、4度も繰り返したことについても「確定判決が言う有罪意識を裏付けるものではなく、むしろかえって無実意識を裏付けると言うべき」と強調。この他、自白内容の展開や、撤回の過程の分析からも、田邉氏の無実を指摘している。
 主任弁護士の後藤昌弘氏は「私たちも読んで目からうろこが出た。なぜ供述内容に矛盾が出たのか、その過程が無実の証明につながる。裁判官はこれを一つの視点として受け止め、供述記録を読み直してほしい」と訴えた。
(由本裕貴)

心理学者の鑑定書を説明する後藤弁護士㊨と川岸弁護士=名古屋高裁で
心理学者の鑑定書を説明する後藤弁護士㊨と川岸弁護士=名古屋高裁で

カテゴリー:社会・経済

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