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田原・バイオマス発電の現状と課題㊦ 政策と企業意向に合う立地

木質バイオマス発電の燃料として代表的な木質チップの山
木質バイオマス発電の燃料として代表的な木質チップの山

 日本のエネルギー政策をめぐる情勢や展望、対策などについてまとめた資源エネルギー庁による「エネルギー白書」。同書の2016(平成28)年版では、15年度時点の再生可能エネルギー発電設備の導入状況を紹介している。
 これによれば、太陽光発電の導入量は東日本大震災以降、急速な拡大を見せているが、この時期をピークに、ここ1~2年では減速気味。逆に、バイオマスは12年度以降の4年で1・7万、4・9万、15・8万、20・5万㌔㍗と堅調に推移し、導入拡大に向けて急成長をたどる。
 さらに、同庁が15年の夏に発表し、2030年度時点での国内エネルギーの需給構造に関する将来像や考えを示した「長期エネルギー需給見通し」(エネルギーミックス)では、国内総発電力量全体の電源構成に占める再生可能エネルギーを現状水準から、原子力発電と同程度並み、最大2%程度上回る22~24%へ、約2倍の引き上げを目標値に設定。主な内訳では水力が約8・8~9・2%、太陽光が約7%、次いでバイオマスが約3・7~4・6%などとしている。
 構図的には、電力自給の原発依存度を可能な限り低減させつつ、バイオマスの積極的な拡大を方向性にしていることからも、新たなエネルギー政策の一つとして、バイオマス発電にかける期待値の高さがうかがえる。 
 こうした国のエネルギー政策方針の動きも関係している中、バイオマス発電設備進出の動きが浮上してきた三河湾沿いの田原市臨海部。
 同庁が公表するFIT法(再エネ特措法)に基づいた再生可能エネルギー発電設備に関する市町村別新規認定状況では、田原市への立地が少なくともこの2年間でバイオマス発電として分類されるメタン発酵ガスが4件、一般木質・農作物残渣(さ)が5件、認定されている。
 同市企画部によると、木材を粉砕した木質チップか固形状にしたペレットが燃料に使われることが分かっており、木質バイオマス発電設備が立地する可能性は十分あると見られる。
 また、臨海部でバイオマス発電の認定件数が集中的に増えた理由に関しては「立地条件として、工業用地に必要なインフラが整備されている」ため、バイオマス事業を合理的に展開したい企業側の意向に相応していることなどが考えられると説明。ただ、確定事項がないことと、企業側への配慮などから「情報については最小限にとどめたい」としている。
 税制改正などにより、財政規模の縮小が想定される田原市にとって、バイオマス発電設備の進出が現実となれば、ある程度の税収増が見込める。さらに環境先進都市として全国に名前が売れるかもしれない。
 動き出した臨海部での“バイオマス構想”。これからの動向に注目が集まりそうだ。
(千葉敬也)

 日本のエネルギー政策をめぐる情勢や展望、対策などについてまとめた資源エネルギー庁による「エネルギー白書」。同書の2016(平成28)年版では、15年度時点の再生可能エネルギー発電設備の導入状況を紹介している。
 これによれば、太陽光発電の導入量は東日本大震災以降、急速な拡大を見せているが、この時期をピークに、ここ1~2年では減速気味。逆に、バイオマスは12年度以降の4年で1・7万、4・9万、15・8万、20・5万㌔㍗と堅調に推移し、導入拡大に向けて急成長をたどる。
 さらに、同庁が15年の夏に発表し、2030年度時点での国内エネルギーの需給構造に関する将来像や考えを示した「長期エネルギー需給見通し」(エネルギーミックス)では、国内総発電力量全体の電源構成に占める再生可能エネルギーを現状水準から、原子力発電と同程度並み、最大2%程度上回る22~24%へ、約2倍の引き上げを目標値に設定。主な内訳では水力が約8・8~9・2%、太陽光が約7%、次いでバイオマスが約3・7~4・6%などとしている。
 構図的には、電力自給の原発依存度を可能な限り低減させつつ、バイオマスの積極的な拡大を方向性にしていることからも、新たなエネルギー政策の一つとして、バイオマス発電にかける期待値の高さがうかがえる。 
 こうした国のエネルギー政策方針の動きも関係している中、バイオマス発電設備進出の動きが浮上してきた三河湾沿いの田原市臨海部。
 同庁が公表するFIT法(再エネ特措法)に基づいた再生可能エネルギー発電設備に関する市町村別新規認定状況では、田原市への立地が少なくともこの2年間でバイオマス発電として分類されるメタン発酵ガスが4件、一般木質・農作物残渣(さ)が5件、認定されている。
 同市企画部によると、木材を粉砕した木質チップか固形状にしたペレットが燃料に使われることが分かっており、木質バイオマス発電設備が立地する可能性は十分あると見られる。
 また、臨海部でバイオマス発電の認定件数が集中的に増えた理由に関しては「立地条件として、工業用地に必要なインフラが整備されている」ため、バイオマス事業を合理的に展開したい企業側の意向に相応していることなどが考えられると説明。ただ、確定事項がないことと、企業側への配慮などから「情報については最小限にとどめたい」としている。
 税制改正などにより、財政規模の縮小が想定される田原市にとって、バイオマス発電設備の進出が現実となれば、ある程度の税収増が見込める。さらに環境先進都市として全国に名前が売れるかもしれない。
 動き出した臨海部での“バイオマス構想”。これからの動向に注目が集まりそうだ。
(千葉敬也)

木質バイオマス発電の燃料として代表的な木質チップの山
木質バイオマス発電の燃料として代表的な木質チップの山

カテゴリー:社会・経済

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