豊橋駅にストリートピアノ登場

　豊橋駅東西自由通路に15日、誰もが気軽に弾ける「ストリートピアノ」が登場した。セレモニーではプロピアニストが演奏し、オペラ歌手が曲に合わせて歌った。ピアノは常設される。
　市内に住む高齢男性がピアノを寄贈し、豊橋駅に置くことを希望していた。
　匿名を望んでいる男性はセレモニーには出席しなかったが、メッセージが代読された。第二次世界大戦の敗戦で、焼け残った大阪・難波の商店街を空腹とむなしさを感じながら一人で歩いた際、流れてきた美空ひばりの歌声とピアノの音を聞いた。心の底から、生きる希望と元気が湧いたという。男性は約60年前に豊橋に移り住んだ。「以来音楽は、いつの時代も人々の心を癒やし、希望を感じられると信じています。地球上の平和が永遠に続く事を祈ってやみません。微力ではありますがピアノとともにエールを送りたいと思います」などとあった。
　テープカットの後、ピアニストの重左（じゅうさ）恵理さんが「こうもり序曲」や古関裕而作曲の「船頭可愛や」、連続テレビ小説「エール」にちなんで「私の愛しいお父様」を演奏した。「アドリアーナ・ルクプルール」ではソプラノ歌手森谷真理さんが曲に合わせて歌声を披露した。
　セレモニーには佐原光一市長も出席。「家族やグループで気軽に弾いてください」と話しながら、自らも「エリーゼのために」などを弾いてみせた。
　約１５０人が見守った。市内の70代女性は「テレビで他の駅で演奏されているのを見ていたけれど、豊橋にピアノが置かれるなんて。駅で生演奏が聴くことができてうれしい」と話した。男子高校生（16）は「魅力的。オペラの声はすごかったです」と話した。また女性塾講師（54）は「クラシックの文化が豊橋に広まってほしいです」と期待を込めた。
　この後、さっそくピアノを弾いた大学生飯室裕太さん（21）は「日本は公共の場所のピアノが少ない。今後は音楽に寄り添った生活になれば。音楽を聴いて心安らぐといいですね」と話した。弾き終えて「すごく楽しかったです」と話した。連弾した佐野真さん（21）は「音楽に力を入れていて、豊橋はいいところだと思いました」と話した。
【安藤聡、林大二朗】