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通夜と葬儀を同日開催 田原市の潮音寺

研究を重ね通夜と葬儀の同日開催を発案した宮本住職=田原市の潮音寺で
研究を重ね通夜と葬儀の同日開催を発案した宮本住職=田原市の潮音寺で

 仕事の多忙を理由に近年、葬儀(告別式)より通夜式の参列者が増えているという。葬儀関連団体の調査でもその傾向は鮮明で、葬儀を取り巻く環境は年々変わっている。そんな中、田原市福江町の潮音寺(宮本利寛住職)は1年前から、通夜の日に葬儀を営む新たなかたちで周囲に一石を投じた。宮本住職は「理論的にも間違っておらず、葬儀を出した檀家(だんか)にも好評だった」と語る。

 宮本住職が葬儀のあり方を考え直すようになったのは約5年前。葬儀より通夜の参列者が多いことを痛感したからだ。
 「参列者の総数が減ったのではなく、通夜に偏ったと思う。通夜はいっぱいだが葬儀はガラガラというケースが増えてきた」と説明する。
 全日本冠婚葬祭互助協会の5年ごとの調査「出席するなら通夜か告別式か」でも、通夜3342人に対し告別式1230件で2・7倍。参列しやすい通夜に対し、日中の葬儀では近親者以外は時間的な制約が多い点で参列者が減る傾向が顕在化した。
 そこで考えたのが「同日開催」だ。同宗派の曹洞宗にも前例がなく、4年前から文献を調べ、宗派の学識者らと意見交換を重ねて間違いないとの結論に至った。
 昨年5月に始め、葬儀の相談に訪れた檀家に選択肢の一つとして提案している。すでに20件を新方式で営み、遺族からも好評だという。
 通夜は午後6時から翌朝までとされるが、新方式は通夜が約15分。続く葬儀は6、7人の僧侶が会し、延べ約1時間で終了する。翌日午前に親族で出棺や火葬、寺で初七日法要や納骨をする。
 同地区では現在も葬儀前に火葬する「骨葬」が主流だ。通夜と葬儀を同日にすれば、火葬前に式を営むことが可能。遠方から参列する親族も「最後の対面」を懇(ねんごろ)に果たせる。
 さらに、田原市は今年度いっぱいで、渥美地区の斎場と火葬場を田原地区に建設中の新施設に集約する。もっとも遠い伊良湖周辺から新施設までは車で約50分と、従来の倍以上かかる。
 従来方式で通夜・葬儀をする場合、火葬時の交通事情を考慮し、すべてをまかなえる新施設でのケースは増えると思われる。一方、近隣の参列者の足が遠のき、会葬者数が減少することも予想される。
 宮本住職は「価値観は多様化したが、葬儀は近親者とともに多くの参列者で故人を見送るのが本来の姿だ。前例踏襲ではなく、遺族の思いをくんで寺も変わるべきでは」と持論を語る。
【加藤広宣】

 仕事の多忙を理由に近年、葬儀(告別式)より通夜式の参列者が増えているという。葬儀関連団体の調査でもその傾向は鮮明で、葬儀を取り巻く環境は年々変わっている。そんな中、田原市福江町の潮音寺(宮本利寛住職)は1年前から、通夜の日に葬儀を営む新たなかたちで周囲に一石を投じた。宮本住職は「理論的にも間違っておらず、葬儀を出した檀家(だんか)にも好評だった」と語る。

 宮本住職が葬儀のあり方を考え直すようになったのは約5年前。葬儀より通夜の参列者が多いことを痛感したからだ。
 「参列者の総数が減ったのではなく、通夜に偏ったと思う。通夜はいっぱいだが葬儀はガラガラというケースが増えてきた」と説明する。
 全日本冠婚葬祭互助協会の5年ごとの調査「出席するなら通夜か告別式か」でも、通夜3342人に対し告別式1230件で2・7倍。参列しやすい通夜に対し、日中の葬儀では近親者以外は時間的な制約が多い点で参列者が減る傾向が顕在化した。
 そこで考えたのが「同日開催」だ。同宗派の曹洞宗にも前例がなく、4年前から文献を調べ、宗派の学識者らと意見交換を重ねて間違いないとの結論に至った。
 昨年5月に始め、葬儀の相談に訪れた檀家に選択肢の一つとして提案している。すでに20件を新方式で営み、遺族からも好評だという。
 通夜は午後6時から翌朝までとされるが、新方式は通夜が約15分。続く葬儀は6、7人の僧侶が会し、延べ約1時間で終了する。翌日午前に親族で出棺や火葬、寺で初七日法要や納骨をする。
 同地区では現在も葬儀前に火葬する「骨葬」が主流だ。通夜と葬儀を同日にすれば、火葬前に式を営むことが可能。遠方から参列する親族も「最後の対面」を懇(ねんごろ)に果たせる。
 さらに、田原市は今年度いっぱいで、渥美地区の斎場と火葬場を田原地区に建設中の新施設に集約する。もっとも遠い伊良湖周辺から新施設までは車で約50分と、従来の倍以上かかる。
 従来方式で通夜・葬儀をする場合、火葬時の交通事情を考慮し、すべてをまかなえる新施設でのケースは増えると思われる。一方、近隣の参列者の足が遠のき、会葬者数が減少することも予想される。
 宮本住職は「価値観は多様化したが、葬儀は近親者とともに多くの参列者で故人を見送るのが本来の姿だ。前例踏襲ではなく、遺族の思いをくんで寺も変わるべきでは」と持論を語る。
【加藤広宣】

研究を重ね通夜と葬儀の同日開催を発案した宮本住職=田原市の潮音寺で
研究を重ね通夜と葬儀の同日開催を発案した宮本住職=田原市の潮音寺で

カテゴリー:社会・経済

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