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県内一斉時短営業突入で飲食店ルポ

閉店準備に追われる芳賀さん=「YAMATO酒場・日の丸や」で18日午後8時54分
閉店準備に追われる芳賀さん=「YAMATO酒場・日の丸や」で18日午後8時54分
最後の客が出ていき、店に残る小倉さん=「太朗串」で午後9時
最後の客が出ていき、店に残る小倉さん=「太朗串」で午後9時

 新型コロナウイルス対策による県下一斉の営業時間短縮が18日夜、始まった。1日4万円の協力金の見返りに、種類を提供する店などが午後9時に閉店する。ただでさえ客足が落ちている中、年末年始の書き入れ時の時短はダメージが大きい。国が唱えた「勝負の3週間」は、感染拡大を抑えられなかった。飲食店が迎えた「勝負の25日間」はどうなるのか。豊橋市内の初日をルポした。

 豊橋駅西口から新幹線ホームに沿うように20の飲食店が軒を連ねる「わんぱく通り」。午後9時が近づくと、店員らが軒先の赤ちょうちんを消すなど閉店準備に追われていた。
 5年前に開店した「YAMATO酒場・日の丸や」は、午後11時半の閉店時間を2時間半繰り上げた。店主の芳賀悠生さん(34)は「年末の稼ぎ時なので協力金があって助かる」と話した。
 店は緊急事態宣言が出た4月から5月まで自主的に1時間営業時間を短縮した。多くの客が敏感に反応し、客足が大幅に落ち込んだからだ。
 店は新幹線乗り場に近いことから、常連客の他にも出張で訪れる会社員のリピート需要が多かったという。感染拡大「第3波」の影響で、ビジネス客らにも会社から「不用意に繁華街へ出ないように」といった指示が出ているようだ。
 閉店30分前、店員から食事のラストオーダーが告げられる。立て続けに女性客が来店したが、店員から「間もなく閉店」と告げられ「やっぱりそうですよね」と諦め顔できびすを返した。
 「9月には持ち直したが、この1カ月で人通りが半分に減った。今回は深刻」としつつ「誰が悪い訳でもない。今は耐えるしかない」と落ち着いた様子で語った。
 同じく豊橋駅西口にある焼鳥店「太朗串」。午後8時半に訪ねると、カウンターに男性客が1人。奥の座敷にさらに数人のグループがいた。午後9時が近づくと、客がタクシーや代行運転を呼び始めた。店の入り口には「午後9時閉店」の張り紙がある。急ごしらえしたものだ。
 店主の小倉廣司さん(74)は、1988年から経営を続ける。今の売り上げは前年の3~4割減っている。9月に持ち直すかと思ったこともあったが、幻だった。
 1日4万円の協力金はありがたい、という。ただ、手続きに困った。県のコールセンターに電話してもつながらない。「パソコンやスマホで見ろなんて、私の年齢ではとても」。以前にコロナ問題で相談した豊橋市役所を自転車で訪れ、職員に親身に相談に乗ってもらった。やはり、ひっきりなしに電話がかかっていたという。
 そして協力金申請に必要な「コロナ対応」ステッカーやポスターの入手方法を聞き、息子に手伝ってもらって、この日に間に合わせた。「急なことだったし、誰をうらむつもりもない。我慢するしかない。でも、もう少し年寄りに優しくしてほしい」と話した。
 午後9時になり、入り口の明かりが消え、のれんが下ろされた。代行運転を待っていた最後の客が出ていった。小倉さんは言った。「バブル崩壊もリーマン・ショックもあったが、これほどひどいことは経験がない」
【山田一晶、加藤広宣】

 新型コロナウイルス対策による県下一斉の営業時間短縮が18日夜、始まった。1日4万円の協力金の見返りに、種類を提供する店などが午後9時に閉店する。ただでさえ客足が落ちている中、年末年始の書き入れ時の時短はダメージが大きい。国が唱えた「勝負の3週間」は、感染拡大を抑えられなかった。飲食店が迎えた「勝負の25日間」はどうなるのか。豊橋市内の初日をルポした。

 豊橋駅西口から新幹線ホームに沿うように20の飲食店が軒を連ねる「わんぱく通り」。午後9時が近づくと、店員らが軒先の赤ちょうちんを消すなど閉店準備に追われていた。
 5年前に開店した「YAMATO酒場・日の丸や」は、午後11時半の閉店時間を2時間半繰り上げた。店主の芳賀悠生さん(34)は「年末の稼ぎ時なので協力金があって助かる」と話した。
 店は緊急事態宣言が出た4月から5月まで自主的に1時間営業時間を短縮した。多くの客が敏感に反応し、客足が大幅に落ち込んだからだ。
 店は新幹線乗り場に近いことから、常連客の他にも出張で訪れる会社員のリピート需要が多かったという。感染拡大「第3波」の影響で、ビジネス客らにも会社から「不用意に繁華街へ出ないように」といった指示が出ているようだ。
 閉店30分前、店員から食事のラストオーダーが告げられる。立て続けに女性客が来店したが、店員から「間もなく閉店」と告げられ「やっぱりそうですよね」と諦め顔できびすを返した。
 「9月には持ち直したが、この1カ月で人通りが半分に減った。今回は深刻」としつつ「誰が悪い訳でもない。今は耐えるしかない」と落ち着いた様子で語った。
 同じく豊橋駅西口にある焼鳥店「太朗串」。午後8時半に訪ねると、カウンターに男性客が1人。奥の座敷にさらに数人のグループがいた。午後9時が近づくと、客がタクシーや代行運転を呼び始めた。店の入り口には「午後9時閉店」の張り紙がある。急ごしらえしたものだ。
 店主の小倉廣司さん(74)は、1988年から経営を続ける。今の売り上げは前年の3~4割減っている。9月に持ち直すかと思ったこともあったが、幻だった。
 1日4万円の協力金はありがたい、という。ただ、手続きに困った。県のコールセンターに電話してもつながらない。「パソコンやスマホで見ろなんて、私の年齢ではとても」。以前にコロナ問題で相談した豊橋市役所を自転車で訪れ、職員に親身に相談に乗ってもらった。やはり、ひっきりなしに電話がかかっていたという。
 そして協力金申請に必要な「コロナ対応」ステッカーやポスターの入手方法を聞き、息子に手伝ってもらって、この日に間に合わせた。「急なことだったし、誰をうらむつもりもない。我慢するしかない。でも、もう少し年寄りに優しくしてほしい」と話した。
 午後9時になり、入り口の明かりが消え、のれんが下ろされた。代行運転を待っていた最後の客が出ていった。小倉さんは言った。「バブル崩壊もリーマン・ショックもあったが、これほどひどいことは経験がない」
【山田一晶、加藤広宣】

閉店準備に追われる芳賀さん=「YAMATO酒場・日の丸や」で18日午後8時54分
閉店準備に追われる芳賀さん=「YAMATO酒場・日の丸や」で18日午後8時54分
最後の客が出ていき、店に残る小倉さん=「太朗串」で午後9時
最後の客が出ていき、店に残る小倉さん=「太朗串」で午後9時

カテゴリー:社会・経済

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