豊川のホーロー看板資料館が3月末で閉館

　国内有数のホーロー看板コレクター佐溝力さん(74）が豊川市の自宅に開設した「看板と広告の資料館　琺瑯（ほうろう）看板研究所」。全国のファンに愛された同所が14年の活動を終え、今月末で閉館する。５０００枚以上のホーロー看板と広告資料は、交流のある北名古屋市歴史民俗資料館（昭和日常博物館）に寄贈される。

　佐溝さんは50年前からホーロー看板のコレクションを始め、１９９２年から各地で展示を続けてきた。市内外の施設などへの貸し出しにも応じ、蒲郡市立図書館で現在開催中の特別展「あれから10年　広告に見る忘れじの東日本大震災」にも協力している。２００７年には自宅を資料館として無料公開。多くのメディアやＳＮＳで紹介され、全国から見学者が訪れている。
　「広告は世相を表す日本のポップアート」と魅力を語る。集めた看板は、小品から車窓看板まで大小さまざま。自宅階段には壁や天井に隙間なく貼られ、２階も至るところに「仁丹」「太田胃散」「オロナミンＣ」などの看板が飾られる。看板以外の物も含め、室内は貴重なコレクションであふれている。
　収集品が多く保管場所が無くなってきたことも閉館理由の一つ。元気なうちに徐々に整理していきたいそうだ。月末までは少人数の見学を受け付け（要予約）、コロナ終息後には貸出中の看板も回収して寄贈する。
　コレクションを手放すことに「寂しくはない。相当珍しいもの以外は、もう看板を集めることはないかな」と佐溝さん。看板を寄贈しても、３００を超える昭和の発明品、「回想法」に使う多くの生活雑貨、そして河原などで拾った人工物で作った「ヒロッタージュ（拾ったとコラージュの造語）」作品の数々は残る。看板以外の制作活動は今後も続けるという。
　看板収集と同じく50年、仕事やボランティアで福祉に携わる佐溝さん。閉館後に力を入れたいのが「昔の思い出博物館」と名付けた高齢者向けグループ回想法だ。施設に蓄音機を持参してレコードをかけ、ハエ取り棒など昔の生活用品を見せて高齢者の脳を活性化させる。15年前から取り組む介護予防で好評を得ている。４月以降は「サミゾチカラコレクション」の名で、回想法や制作活動に一層励むと意気込みを見せた。
　見学申し込み、問い合わせは佐溝さん（０５３３・84・４４０３）へ。
【田中博子】