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個人間の猫譲渡で問題も

1日に逃げ出し保護されたキジトラ㊤と8日に脱走したキジシロ(18日夜、提供)
1日に逃げ出し保護されたキジトラ㊤と8日に脱走したキジシロ(18日夜、提供)
「もう猫は飼わない」と話す男性=豊橋市内で16日
「もう猫は飼わない」と話す男性=豊橋市内で16日

 豊橋市の東愛知新聞社の近所で18日午後、家の外へ出てしまった猫2匹が保護された。1匹は元日からさまよっていた。ボランティアがチラシを作り、近所を探し歩いた。猫が逃げ出す事案は少なからずあるが、今回は個人間の猫の譲渡の問題点が浮き彫りになったと関係者は言う。

 飼い主はアパートで独り暮らしする男性。車椅子生活をしている。男性は今月1日と12日に、いずれも引き取ったばかりの猫を逃した。2匹目の猫(キジシロ)は6日に家に来た。男性は最初の猫(キジトラ)がいなくなったことを周囲に伝えず、新たな猫を手に入れていた。
 男性によると、家の外へ出ようとした際に、ドアの隙間から逃げ出したという。ケージなどは用意されていなかった。
 関わったボランティアの女性に、キジシロの脱走が伝わったのは13日になってから。飼育状況の確認のための猫の写真が送られてこないため、譲渡元の女性に確認したところ、男性が逃したことが分かった。そして男性に話を聞き、元日にもキジトラが脱走していたことを知ったという。
 男性は、豊橋市保健所の「飼い主さがし案内板」を見て、猫を手に入れた。新しい飼い主を探すため、無料で利用できる。保健所は「動物の譲渡に関するトラブルについて一切の責任を負いません」と断っている。
 キジシロを譲渡したのは、市内の「餌やりさん」と呼ばれる女性らだった。不妊・去勢手術もせずに餌だけ与えている様子を見かねたボランティアが、猫の手術を申し出た。そして人なれしていることから新しい飼い主を見つけ、室内で飼ってもらうことを提案した。餌やりさんは案内板に投稿し、それを見た車椅子の男性の言うことを信じて、引き取りに来た別の人物に猫を預けたという。新しい飼い主が車椅子を使っていることを知らなかった。
 ボランティアが市民団体に協力を求め、猫の写真を入れたチラシを作って、アパートの周辺を探した。似た猫を見たという情報が寄せられた。そして18日午後、アパート周辺でキジトラが捕獲器に入った。さらにキジシロを、近所の人が捕まえてくれた。ブログで知って、応援に来た人が5人いた。捕獲のための餌置きを了承してくれた人もいた。猫は現在、ボランティアの家にいる。キジトラは少し痩せたが、2匹とも元気だ。
 男性は、車椅子生活になる前に猫を飼ったことがあるという。キジトラには青い首輪をつけてやった。取材に「もう飼うのは無理だと分かった。かわいそうなことをした」と話した。ボランティアに対し、チラシの印刷代を負担すると申し出ているという。
 今回の問題点は、逃した男性だけでなく、新しい飼い主の様子を譲渡元が十分に確認しなかったことにある。
 市民団体などが開く譲渡会では、高齢者だけの世帯、単身者は断る場合がある。そして終生の完全室内飼いができること、病気になったら病院に連れて行くこと、などの誓約書を書かせる。また「トライアル」として試験期間を設け、その成否で譲渡の可否を決めるところが多い。個人間の譲渡で確認が難しいなら、ボランティアや市民団体に手伝ってもらわなければならなかった。
 逃げた猫も逃した人も不幸になるし、探すボランティアは無報酬だ。このようなことが起きないよう、譲渡のルールを明確化し、行政が周知すべきではないか。
【山田一晶】

 豊橋市の東愛知新聞社の近所で18日午後、家の外へ出てしまった猫2匹が保護された。1匹は元日からさまよっていた。ボランティアがチラシを作り、近所を探し歩いた。猫が逃げ出す事案は少なからずあるが、今回は個人間の猫の譲渡の問題点が浮き彫りになったと関係者は言う。

 飼い主はアパートで独り暮らしする男性。車椅子生活をしている。男性は今月1日と12日に、いずれも引き取ったばかりの猫を逃した。2匹目の猫(キジシロ)は6日に家に来た。男性は最初の猫(キジトラ)がいなくなったことを周囲に伝えず、新たな猫を手に入れていた。
 男性によると、家の外へ出ようとした際に、ドアの隙間から逃げ出したという。ケージなどは用意されていなかった。
 関わったボランティアの女性に、キジシロの脱走が伝わったのは13日になってから。飼育状況の確認のための猫の写真が送られてこないため、譲渡元の女性に確認したところ、男性が逃したことが分かった。そして男性に話を聞き、元日にもキジトラが脱走していたことを知ったという。
 男性は、豊橋市保健所の「飼い主さがし案内板」を見て、猫を手に入れた。新しい飼い主を探すため、無料で利用できる。保健所は「動物の譲渡に関するトラブルについて一切の責任を負いません」と断っている。
 キジシロを譲渡したのは、市内の「餌やりさん」と呼ばれる女性らだった。不妊・去勢手術もせずに餌だけ与えている様子を見かねたボランティアが、猫の手術を申し出た。そして人なれしていることから新しい飼い主を見つけ、室内で飼ってもらうことを提案した。餌やりさんは案内板に投稿し、それを見た車椅子の男性の言うことを信じて、引き取りに来た別の人物に猫を預けたという。新しい飼い主が車椅子を使っていることを知らなかった。
 ボランティアが市民団体に協力を求め、猫の写真を入れたチラシを作って、アパートの周辺を探した。似た猫を見たという情報が寄せられた。そして18日午後、アパート周辺でキジトラが捕獲器に入った。さらにキジシロを、近所の人が捕まえてくれた。ブログで知って、応援に来た人が5人いた。捕獲のための餌置きを了承してくれた人もいた。猫は現在、ボランティアの家にいる。キジトラは少し痩せたが、2匹とも元気だ。
 男性は、車椅子生活になる前に猫を飼ったことがあるという。キジトラには青い首輪をつけてやった。取材に「もう飼うのは無理だと分かった。かわいそうなことをした」と話した。ボランティアに対し、チラシの印刷代を負担すると申し出ているという。
 今回の問題点は、逃した男性だけでなく、新しい飼い主の様子を譲渡元が十分に確認しなかったことにある。
 市民団体などが開く譲渡会では、高齢者だけの世帯、単身者は断る場合がある。そして終生の完全室内飼いができること、病気になったら病院に連れて行くこと、などの誓約書を書かせる。また「トライアル」として試験期間を設け、その成否で譲渡の可否を決めるところが多い。個人間の譲渡で確認が難しいなら、ボランティアや市民団体に手伝ってもらわなければならなかった。
 逃げた猫も逃した人も不幸になるし、探すボランティアは無報酬だ。このようなことが起きないよう、譲渡のルールを明確化し、行政が周知すべきではないか。
【山田一晶】

1日に逃げ出し保護されたキジトラ㊤と8日に脱走したキジシロ(18日夜、提供)
1日に逃げ出し保護されたキジトラ㊤と8日に脱走したキジシロ(18日夜、提供)
「もう猫は飼わない」と話す男性=豊橋市内で16日
「もう猫は飼わない」と話す男性=豊橋市内で16日

カテゴリー:社会・経済

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